迎えの馬車ってなんだ? というか、そこまで急いでる問題なのか?

 つまり母親孝行ではなく、仕事で立ち寄っているのだと察したラビは、思わず足を止めて、肩越しにセドリックを見上げてしまった。

「お前、今までオレに頼み事なんて、してこなかったのにな」

 これまでラビは、セドリックやルーファスから、薬草師や獣師としての力を求められた事はなかった。王都の獣師のように、専門機関からの推薦や肩書きがあるわけでもないので、王宮騎士団から依頼を受られるような立場でもないのだ。

 すると、ユリシスが片眉を上げ、「こちらにも事情があるのです」と前置きして続けた。

「害獣を扱い、辺境の地まで出向いてくれるような都合のいい獣師がすぐに掴まらないのが現状です。相手は中級クラスの害獣ですし、そもそも第三騎士団の予算の都合もあります」
「うわぁ、マジか。というか色々と最低だ」

 つまり、ちょうど都合のいい人材がいたという理由だけで、白矢が立ったという事だろうか?