「それで、最近はどうしたの、ビアンカ?」

 ラビがしゃがんで目を合わせると、ビアンカは顔の前で前足を組み『それがね』と困ったように話し始めた。

『ちょっと木登りをした後から、尻尾の方に違和感があって』
「痛いの?」
『少しだけ』

 それは大変だ。単なる我が儘ではなく、本当に困り事のようだと察し、ラビは内心で疑って申し訳ないと謝り反省した。

 ビアンカは、ふわふわの尻尾を引き寄せながら話しを続けた。

『この辺りかしらね。違和感がある箇所が床に触れると、少し痛むのだけれど、自分では確認出来なくて困っているの』

 気位の高いビアンカにとって、付け根から少し離れた自慢の尻尾をめくられるのを、オスであるノエルに見られる事は屈辱だろう。

 ラビは、彼女がノエルを追い払った理由について納得した。話を聞いた中で一つの可能性を推測しながら、ビアンカに断りを入れて、患部を刺激しないよう心掛けつつ長く柔らかな毛をかき分けた。