『……来月には旅に出たいって言ってたもんな』
「何事もなければ、今度こそ出発できるよ。気になるのは、ゲンさんかな。胸が弱いから、彼自身の薬草に関しては多めに揃えてあげて、入手先とか育て方とか、色々と教えておくつもりでノートにまとめている最中なんだ」
『ふうん。お前が机の前で頭抱えてた例のノートか。ま、無理だけはすんなよ。――おい、あっちにも騎士がいるぜ』

 ノエルがふと顔を横に向け、促されたラビもそちらへ目をやった。

 別荘の庭園に、三人の騎士の姿があった。二十代の前半から後半までの男達で、初夏の暖かい日差しの下で、騎士団の制服をきっちりと着込んでいた。

 上司のいない隙にお喋りを楽しんでいた彼らが、ラビの視線に気付いて振り返った。小柄な若い男が目を見開き、他の男も似たような顔をして次々に口を閉じた。

 彼らが金髪に目を止めている様子が分かって、ラビは露骨に舌打ちし「見世物じゃねぇぞ」と口の中で呟いた。