「いいんだよ。無償で慈善協力はする気も、金の都合をつけようとも思ってないし。悩んでいる間にずるずる予定が伸びて、もう二ヶ月も身動き出来てないんだ。今度こそは、今月中では全部終わらせてやるッ」

 先月、先々月と、不思議と遠い場所からやって来る新規の客が続いていた。彼らはラビの金髪金目に少し目を瞠ったものの、差別意識はないと言わんばかりに、返って労うように微笑んでまでくれた。

 皆人が良くて、中にはご高齢の町医者までいて、苦労して来てくれたのが申し訳なくて、ラビは「急で済まないが、来月分まで定量の注文を入れてもいいかね?」との頼みを断れず、今月まで予定が入ってしまったのである。

 誰かから紹介でもされたらしいが、彼らは揃って名前を明かす事はなかった。ただラビを見て、「なるほど、君が『例の獣師君なんだね』」と興味深そうには呟いていたが。

 ラビと共に玄関前に並んだノエルは、例の客達の紹介先を推測して、半ば同情するように隣の彼女を見た。王都住まいか、王都に出入りしている者が多いとは彼は薄々察してはいた。