やや長い栗色の髪を片方の耳に掛けた、鋭い眼差しを細い眼鏡の奥にしまった男だった。年は二十代中盤ぐらいだろうか。顔立ちは整っていて体躯は細長く、男にしては色が白い。薄い水色の瞳には愛想がなく、彼はラビを小汚いと言わんばかりの顔で眺めていた。

「……副団長、彼が例の幼馴染の獣師ですか」

 一文の台詞だけで、ラビは浅い苛立ちを覚えた。セドリックが自分の事をどのように話したのかは知らないが、男の見下すような眼差しと、言い方が気に食わなかった。

 金髪金目には触れてはいないが、恐らく『忌み子』を嫌っているタイプだろう。そして、低い身分の人間を下に見るタイプの貴族だ。その男が自分を男だと勘違いしている事を把握しながら、ラビは、とりあえずセドリックに訊いた。

「おい、セドリック。こいつは誰だ?」
「えっと、彼は僕が所属する第三騎士団の補佐官、ユリシスです」

 紹介されたユリシスが、「こいつとはなんですか、失礼な」と眼鏡を押し上げた。ラビの足元で、ノエルが『てめぇの事だよ』と当然のように突っ込み、それが馬達にはツボだったのか『ぷふっ』と笑い声を忍ばせて小さく嘶いた。