まさか、ルーファスがこのような強硬手段に出るとは夢にも思わなかった。行動を制限されるうえ、セドリック達の監視下に置かれるなんて最悪だ。そんな法律があるなんて、知っている方がおかしい。

 ラビは怒りと困惑と、周囲の誰一人の理解も得られない状況に、更に涙腺を緩ませた。ああ最悪だ、と自分が可哀そうに思えるぐらいショックが大きい。

「落ち着いて下さい、ラビ。兄さんが認めなくとも、十八歳になれば終了となりますから」

 セドリックが小さい子供に聞かせるように言い、俯くラビの手を取った。触れられた手は暖かく、なぜだか安心出来て、苛立ちが少しだけ落ち着いた。

 つまり、約一年は我慢しろと言う事だ。なんでこんな事に……ッ

 ラビは、弱々しくセドリックを睨み上げた。こちらを覗き込むセドリックが、嬉しさを出すまいとする顔で微笑んでいる事に気付き、人の気も知らないで何笑ってんだと、なんだか腹が立ってきた。

「……お前、なんで笑ってんの」
「え――あの、いや、別に僕が嬉しいという訳ではなくて、その……まぁ、アレです。兄さんの方が数枚上手だったなぁ、と思いまして」

 その台詞を聞いて、ラビの中で怒りが沸点を超えた。

 彼女はすかさず右足を振り上げると、セドリックの足を、力の限り思い切り踏みつけたのだった。