「マジかッ、超メーワク! 今すぐ撤回してよ!」
「王宮騎士団総団長の許可を頂ければ、可能ですよ」
『あ~……長男坊にしてやられたな、ラビ』

 様子を見守っていたノエルが、可哀そうだが仕方がないという顔をした。

 ラビは言葉が出ず、怒り心頭で、思わず潤んだ瞳をセドリックに向けた。セドリックはラビの顔を覗き込むと、自分の胸倉を掴む彼女の手を優しく解き、両手で握りしめた。

「すみませんラビ、旅の件を話したら、兄さんが切れてしまいまして……」

 あの野郎! 

 ラビはセドリックの手を振り払うと、言葉が出ないまま地団太を踏んだ。

 セドリックのみならず、なんでお前も出てくるんだよと、もう四年は会っていないルーファスの涼しい顔色を思い浮かべて、ラビは心の中で思いつく限りの悪態を吐いた。

 その様子を見守っていたヴァンが、「可哀そうなのはウチの団長だよな」とぼやいた。

「決定が通達された時、ショックで倒れたからな」
「俺、昼食の肉全部もらった」

 ヴァンとテトがそれぞれ主張したが、ラビは本心から叫び返した。

「グリセンなんかどうでもいい! ルーファス許すまじ!」
「やめてあげてッ、団長があまりにも可哀そうだよ!」

 サーバルが思わず悲痛な声を上げ、ジンが「ひでぇッ」と叫んだ。