やりとりを見守っていた馬が、僅かに目尻を下げた。
『お顔を見せないんですか? それは残念です。――ああ、では最後に、私に挨拶して下さいませんか』
ふと考えた馬が、そう言って頭を下げてきた。ラビは「仕方ないか」と嘆息し、馬の頭を優しく撫でてやった。
「よし。じゃあ、ひとまずオレは一旦かえ――」
そう言い終わらないうちに、別荘から一人の男が飛び出してきた。
「ちょっと待って下さいラビッ、顔も見せずに帰ってしまうつもりなんですか!?」
悲痛な叫びと共に、蒼灰色の癖のない髪に、優しい深い藍色の瞳を持った二十歳ぐらいの美青年が、見捨てられた子犬のような表情でラビの前に立ち塞がった。
彼は、伯爵家の二男であるセドリック・ヒューガノーズであり、ラビの幼馴染だった。騎士団の正装を身にまとっており、腰には金の装飾がされた剣がある。小奇麗な出で立ちは、足の先から頭の天辺まで貴族そのものだ。
セドリックは、馬の頭に手を置いたままのラビを、しばらく見つめた。ラビも、既に自分より頭二個以上も背丈が高くなってしまった幼馴染の彼を、じっと見つめ返していた。
『お顔を見せないんですか? それは残念です。――ああ、では最後に、私に挨拶して下さいませんか』
ふと考えた馬が、そう言って頭を下げてきた。ラビは「仕方ないか」と嘆息し、馬の頭を優しく撫でてやった。
「よし。じゃあ、ひとまずオレは一旦かえ――」
そう言い終わらないうちに、別荘から一人の男が飛び出してきた。
「ちょっと待って下さいラビッ、顔も見せずに帰ってしまうつもりなんですか!?」
悲痛な叫びと共に、蒼灰色の癖のない髪に、優しい深い藍色の瞳を持った二十歳ぐらいの美青年が、見捨てられた子犬のような表情でラビの前に立ち塞がった。
彼は、伯爵家の二男であるセドリック・ヒューガノーズであり、ラビの幼馴染だった。騎士団の正装を身にまとっており、腰には金の装飾がされた剣がある。小奇麗な出で立ちは、足の先から頭の天辺まで貴族そのものだ。
セドリックは、馬の頭に手を置いたままのラビを、しばらく見つめた。ラビも、既に自分より頭二個以上も背丈が高くなってしまった幼馴染の彼を、じっと見つめ返していた。