ゆく先の決まっていない旅については賛成できない。

 君の事だから、自分の家に帰ると言い出した時のように、忠告を聞かないだろう。だから、心苦しいが強硬手段をとる事にした。

 旅に出るのなら、私を納得させてからでないと許可しない。

             王宮騎士団総団長ルーファス・ヒューガノーズ』


 随分と強気な手紙だ。喧嘩を売っているのだろうかと、ラビは眉を潜めた。

 八年前、ラビが自分の家に戻るといった時は、伯爵や夫人は納得してくれていた。当時、ルーファスもセドリックも少年であり、強い反対は見せていなかったような覚えはある。二人とも、ラビが少ない荷物を持って伯爵邸を出る時は、口を噤んで黙っていた。

 そもそも、自分で決めた行動を起こすのに、何故ルーファスやセドリックの許可を得なければならないのだろう。

「別に、ルーファスの納得とかいらないし」

 彼のいう強硬手段については、恐らく伯爵夫人から説得でもされるのだろうと安易な想像が浮かんだ。

 しかし、こちらの決心は固いのだ。仲良くしてもらっている使用人総出で引き止められたとしても、ラビは旅に出るつもりだった。