帰宅してからしばらく、何故か、薬草師と獣師の双方が忙しいという滅多にない日々が続いた。

 二週間近く店を閉じていたせいなのか、まず、薬草を欲しがる常連客の訪問が続いた。紹介されたという人が不思議なほど多く、遠くから老年の男女までやって来て、腰通に効く塗り薬の材料を数人前も購入していった。

 ノエルは、帰宅してから二日ほどで【月の石】の副作用がようやく抜け、人が来ても堂々と寝転がれる幸福を噛みしめていた。

 薬草師として忙しい間、獣師としての訪問相談も続いた。

 獣師としての仕事に関しても、何故か隣町から数時間かけて馬車でやってくる人もいれば、遠方から半日以上かけて立ち寄る人もいた。こちらもまた紹介を受けた人がほとんどで、ペットを引き連れての直接相談も続いて、それだけで一日が終わってしまう事もあった。

 獣師の相談依頼については、新規の客のほとんどが「恐れ知らずの、ちょっと風変わりな若い獣師様ですよね?」と開口一番に問いかけて来て、ラビは困惑するばかりだった。

 事情は分からないが、専門技術は持っていない事を前もって伝えて、相談は断らずに受けた。

 直接持ち込まれたペット相談については、動物によって症状も様々だった。単に餌の好き嫌い、実はアレギー持ち、恋の悩み、ストレス等あった。軽い捻挫や腰痛などに関しては、獣医に診てもらう事を勧めた。

 すると、明らかに地らの周辺区域出身ではない御者から、馬を見てほしいという相談まで来て、ラビは、ますますおかしいぞと感じ始めた。

          ※※※

 ラビの家に、珍しく手紙が届けられたのは、翌月に入って夏の日差しが暑くなった頃だった。

 忙しさに落ち着きが出た久々の休日、旅にまだ出られていない自分の状況に気付いて落胆していたラビは、ほとんど確認も忘れてしまうぐらい利用頻度のないポストに、手紙が挟まっている事に気付いた。