「ノ、ノエルは親友だからッ」
「僕だってラビの幼馴染で、あなたとは付き合いの長い友人同士です。何だか、僕だけが仲間外れのようで寂しいですよ」

 昔から付き合いはあるのだし、確かに親友に近い存在ではあるような気はする。

 しかし、苦しい事に違いはないのだ。めいいっぱい背中から締め上げられ、ラビの身体は悲鳴を上げていた。

「……友人同士のスキンシップっていうか、これ一方的に抱き締められているだけなんだけどッ。お前今までこんな事しなかっただろ! 苦しいからッ、はーなーせー!」
「社会に出て、友人同士の付き合いを学びましたからね」

 セドリックは、涼しい顔でしれっと答えた。ラビの髪が顎先に触れるのを感じながら、ふと苦しそうな表情で、彼は華奢な身体を更に強く抱き寄せた。

「――嫉妬しますよ。どうか、僕以外の男に触らせないで下さい。焦燥でどうにかなってしまいそうだ」

 風が吹き抜けた一瞬、彼は口の中で小さく囁いた。

 ラビは、風の音で聞き逃してしまった。彼が何を呟いたのか不思議に思ったが、苦しさに変わりはなかったので、強硬手段に出る事にした。