前方の馬車の馬を手入れしていた男が、馬の鼻息とラビの小さな声に気付いて、怪訝そうに顔を持ち上げたが、別の馬が首を伸ばして彼の視界を遮った。彼は「気のせいか」と首を傾げて、自分の作業に戻った。
「先月にも会っているし、いらない世話だよ。うん。だってあいつ、無駄に心配性だから、会うと途端に面倒になるんだ。ちゃんと食ってるかとか、小さいとか、いちいち煩いし」
『面倒ってのが本音だろうが。そうやって逃げて、結局、先月は一年振りの顔会わせになったのを忘れたのか?』
ノエルがそれとなく注意したが、ラビは「それとこれとは状況が違うじゃん」と、当然のように言ってのけた。
「数ヶ月で人間は変わったりしないよ。あいつの事だから、また暇を見付けてすぐに戻って来るんじゃない? 挨拶はその時でも問題ないって」
『人間にとっては、一ヶ月も長い時間だと思うがなぁ……』
「夫人だって、息子と水入らずの方が嬉しいに決まってるよ。最近は伯爵も不在だからさ、ここは気を使ってやろうぜ」
ラビは、ノエルに向かって少年のような陽気な笑みを浮かべて、「なっ」と言って親指まで立てて見せた。ノエルは、彼女が面倒をしたくないだけだと気付いたが、口にはしなかった。
「先月にも会っているし、いらない世話だよ。うん。だってあいつ、無駄に心配性だから、会うと途端に面倒になるんだ。ちゃんと食ってるかとか、小さいとか、いちいち煩いし」
『面倒ってのが本音だろうが。そうやって逃げて、結局、先月は一年振りの顔会わせになったのを忘れたのか?』
ノエルがそれとなく注意したが、ラビは「それとこれとは状況が違うじゃん」と、当然のように言ってのけた。
「数ヶ月で人間は変わったりしないよ。あいつの事だから、また暇を見付けてすぐに戻って来るんじゃない? 挨拶はその時でも問題ないって」
『人間にとっては、一ヶ月も長い時間だと思うがなぁ……』
「夫人だって、息子と水入らずの方が嬉しいに決まってるよ。最近は伯爵も不在だからさ、ここは気を使ってやろうぜ」
ラビは、ノエルに向かって少年のような陽気な笑みを浮かべて、「なっ」と言って親指まで立てて見せた。ノエルは、彼女が面倒をしたくないだけだと気付いたが、口にはしなかった。