「いつも、あなたがとても美味しそうに食べてくれるからですよ。だから兄さんも、あえて苦手だとは母上に伝えないのでしょう」
「……セドリックが言ってる事、よく分かんないよ。好きなら好き、苦手なら苦手で食べないと思うけど、スコーン食べるの、本当は好きじゃないって話?」
「いいえ、母上のスコーンは美味しく頂いていますよ」
セドリックは苦笑を浮かべると、窓の方へ視線を流した。
「――本当に。好きな物を好きだと正直に言える人だったら、僕も困らなかったんですけどねぇ」
彼の独り言の意味が呑み込めなかったが、ラビは視線が離れてくれた事に安堵して、深く尋ねる事はしなかった。
1
天候に恵まれた事もあって、帰還する今回の馬車旅は、ホノワ村まで五日もかからなかった。
ヴィルトン地方にあるラオルテの町から出発して、四日目の夕刻前、馬車は伯爵の別荘前へ到着した。セドリックが戻ると、伯爵夫人は早速スコーンを用意して三人に振る舞った。
「……セドリックが言ってる事、よく分かんないよ。好きなら好き、苦手なら苦手で食べないと思うけど、スコーン食べるの、本当は好きじゃないって話?」
「いいえ、母上のスコーンは美味しく頂いていますよ」
セドリックは苦笑を浮かべると、窓の方へ視線を流した。
「――本当に。好きな物を好きだと正直に言える人だったら、僕も困らなかったんですけどねぇ」
彼の独り言の意味が呑み込めなかったが、ラビは視線が離れてくれた事に安堵して、深く尋ねる事はしなかった。
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天候に恵まれた事もあって、帰還する今回の馬車旅は、ホノワ村まで五日もかからなかった。
ヴィルトン地方にあるラオルテの町から出発して、四日目の夕刻前、馬車は伯爵の別荘前へ到着した。セドリックが戻ると、伯爵夫人は早速スコーンを用意して三人に振る舞った。