過去の緊張を思い出し、グリセンが青い顔をして腹を押さえた。テトが胃腸の弱い上司を見つめて、「その肉食べないなら、もらっていいっすか?」と平気な顔で要求した。

 団長の許可を得て肉を掠め取るテトの向かい側で、ユリシスが、ラビに言葉を続けた。

「君は、もう少し態度には気をつけるべきではないのですか? それとも、意外と根は素直なんですかね」
「お前、喧嘩売ってんの?」

 どの態度を指摘されているのか分からなかったが、嫌味であるとは理解して、ラビは拳を固めた。すると、グリセンが腹を抱えで「ぐぅ」と呻き、近くにいた男達がすかさず「暴力は良くない」と指摘した。

 その時、セドリックがラビを見つめ、目を優しげに細めた。

「ラビは根が素直なんですよね」
「は? なんでお前にそんな事言われなきゃならないんだよ」
『あ~、確かに。お前、ガキの頃から進歩ねぇもんな』
「進歩してるよ!」

 ラビは、満腹で寝そべったノエルを振り返ると、強く反論した。

「オレもう十七歳だし、結構身長も伸びたし。最近は一人でもどうにか眠れるし、食器とか家具とか壊す数も減ってるじゃん!」

 どうだ、とラビが勝ち誇った顔で宣言した。