すると馬は、茶色の目を細めてこう言った。
『以前も、お会いしましたね』
「ああ、やっぱり。前も来ていた子?」
聞き覚えのある声だと思い出し、ラビは「なるほど」と呟いた。
賢く人語を理解する雌馬がいた事は、印象に強く残っている。他の馬は言葉は理解するが、ここまで丁寧に駆使するまでのものはいなかった。
ラビが歩みを止めて考えていると、その馬が、尻尾を一度振るって小さな虫を払った。
『今日は次男のセドリック様が、お供を連れていらっしゃっているのですよ』
「ふうん。という事は、今は夫人に挨拶しているのか……いつ出る予定なの?」
『そうですね、長居の予定はないようですが……』
彼女は賢い馬であるが、人間の都合や社会的知識の全てを理解している訳ではない。
セドリックは、ヒューガノーズ伯爵の次男で、現在は王宮騎士団に所属する第三支部の副団長である。ちょくちょく戻ってきては母親に顔を見せている親孝行者だった。騎士の場合は仕事の都合で外泊も多いが、現在は兄であるルーファスと共に、王都の伯爵邸を拠点にしている。
『以前も、お会いしましたね』
「ああ、やっぱり。前も来ていた子?」
聞き覚えのある声だと思い出し、ラビは「なるほど」と呟いた。
賢く人語を理解する雌馬がいた事は、印象に強く残っている。他の馬は言葉は理解するが、ここまで丁寧に駆使するまでのものはいなかった。
ラビが歩みを止めて考えていると、その馬が、尻尾を一度振るって小さな虫を払った。
『今日は次男のセドリック様が、お供を連れていらっしゃっているのですよ』
「ふうん。という事は、今は夫人に挨拶しているのか……いつ出る予定なの?」
『そうですね、長居の予定はないようですが……』
彼女は賢い馬であるが、人間の都合や社会的知識の全てを理解している訳ではない。
セドリックは、ヒューガノーズ伯爵の次男で、現在は王宮騎士団に所属する第三支部の副団長である。ちょくちょく戻ってきては母親に顔を見せている親孝行者だった。騎士の場合は仕事の都合で外泊も多いが、現在は兄であるルーファスと共に、王都の伯爵邸を拠点にしている。