痛みで滲んだ視界で腕の状況を確認してみると、形もちゃんと残っていた。袖が切れて皮膚に鋭い切り傷が入っている程度で、比較的傷は浅く済んでいる。
強烈な一撃を放った氷狼と、先程の悪鬼が操る大きな氷狼の二頭が、ラビに止めを刺すべく走り出した。
その瞬間、まるで雷が落ちたような、恐ろしい獣の咆哮が空気を震わせた。
2
響き渡る咆哮は、そこに含まれる激しい怒りと、息が詰まるほどの殺気をまとって聞く者の全身に突き刺さった。
大気を震わせる獣の咆哮は、窓ガラスと建物を震わせて、大地をも振動させた。生き物達が、激しく鼓膜を叩く野獣の怒りを聞いて、本能的な危機感から動きを止める。
先程まで晴れていたはずの空に、低い雲が渦を巻いて広がり、あっという間に日差しが遮られた。漆黒の毛並みに赤黒い光りをまとわせ始めた一頭の黒大狼が触れている大地が割れ、低い唸りを轟かせて全身の毛が逆立った。
一回り身体を膨れさせた黒大狼に、三本目の尾が出現して俊敏に伸びた。黒大狼の尾は、まるで生き物のように動き出して、石が積み重なった荷車を引き寄せた。
二人の騎士が逃げるそばから、漆黒の獣が大きな口を開け、荷車の中の石を勢いよく喰らい始めた。動きを止めた生き物達の前で、野獣の鋭利な歯が荷車ごと石を噛み砕く。
途端に、黒大狼の身体が急激に数倍の大きさまで成長した。それは警備棟の半分までの高さに達すると、その鬣に赤黒い炎が灯り始め、尾が別れて五本となり、鋭利な銀色の爪が伸びて大地を刺した。
鋭利な牙を覗かせた口から、重々しい吐息と共に赤黒い炎が零れ出した。変化を終えた妖獣の黒大狼が、怒り狂った金緑の眼光を上げ、標的を定めるなり瞳孔を開かせた。
一瞬怯んだ氷狼達が、警戒して耳と尾を伏せながら、黒大狼を威嚇し始めた。
強烈な一撃を放った氷狼と、先程の悪鬼が操る大きな氷狼の二頭が、ラビに止めを刺すべく走り出した。
その瞬間、まるで雷が落ちたような、恐ろしい獣の咆哮が空気を震わせた。
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響き渡る咆哮は、そこに含まれる激しい怒りと、息が詰まるほどの殺気をまとって聞く者の全身に突き刺さった。
大気を震わせる獣の咆哮は、窓ガラスと建物を震わせて、大地をも振動させた。生き物達が、激しく鼓膜を叩く野獣の怒りを聞いて、本能的な危機感から動きを止める。
先程まで晴れていたはずの空に、低い雲が渦を巻いて広がり、あっという間に日差しが遮られた。漆黒の毛並みに赤黒い光りをまとわせ始めた一頭の黒大狼が触れている大地が割れ、低い唸りを轟かせて全身の毛が逆立った。
一回り身体を膨れさせた黒大狼に、三本目の尾が出現して俊敏に伸びた。黒大狼の尾は、まるで生き物のように動き出して、石が積み重なった荷車を引き寄せた。
二人の騎士が逃げるそばから、漆黒の獣が大きな口を開け、荷車の中の石を勢いよく喰らい始めた。動きを止めた生き物達の前で、野獣の鋭利な歯が荷車ごと石を噛み砕く。
途端に、黒大狼の身体が急激に数倍の大きさまで成長した。それは警備棟の半分までの高さに達すると、その鬣に赤黒い炎が灯り始め、尾が別れて五本となり、鋭利な銀色の爪が伸びて大地を刺した。
鋭利な牙を覗かせた口から、重々しい吐息と共に赤黒い炎が零れ出した。変化を終えた妖獣の黒大狼が、怒り狂った金緑の眼光を上げ、標的を定めるなり瞳孔を開かせた。
一瞬怯んだ氷狼達が、警戒して耳と尾を伏せながら、黒大狼を威嚇し始めた。