悪鬼が事切れると同時に、氷狼が崩れ落ちて地面に倒れ込んだ。ラビは、茫然とするジンの前で剣を下げた。

「……おいおい、こりゃあ一体どうなってんだ?」

 不意に、別方向からそんな呟きが上がった。

 振り返ると、そこには助っ人に駆け付けてくれていたらしい、ヴァンとサーバルがいた。彼らはラビ達のそばで足を止めると、目の前で起こった事が信じられないような顔で呟いた。

「おい、お前ら一体どういう手を使ったんだよ」
「君達は一体何をしたんだ?」

 ヴァンが前髪をかき上げるそばから、サーバルがラビに詰め寄った。

「君は、魔法が使える獣師なのかい!?」
「んなバカな事ある訳ねぇだろカス」

 サーバルの混乱の質問に対して、ラビは冷たく断言した。

 ジンが途端に「汚いうえにひどい中傷だッ」と突っ込み、ヴァンとサーバルは沈黙したが、彼女は三人の動揺を無視して続けた。

「氷狼の鬣のあたりに、視認が難しい小さな害獣がついてる。そいつを叩き潰せば氷狼は止まるから、そういう事で宜しく!」
「は!? ちょッ、待て!」

 ジンが止める声も聞かず、ラビは、グリセンの元へ向かって走り出した。対策について共有し、指示させるならば彼が適任だろうと考えての事だった。