町の中心地にある大きな商店の一角で、ノエルはようやく足を止めた。

 並べられた荷車の中に、黄色い石が多く混ざった石炭が乗せられた荷車があった。黄色い石は大小様々で、まるで石の中に月光が入っているように鈍く光って見えた。

「ノエル、こんなところに堂々と黄色い石が置かれてるッ」
『落ち着けよ、普通の人間にはただの石にしか見えねぇんだ。【月の石】はこれだけみてぇだから、ひとまず隔離させとけば問題ない。このままここに置いていたとして、最悪の展開で、氷狼を操っている悪鬼にみすみす取られる事態だけは避けたいから、お前の幼馴染君達に任せた方がいいって事だ』

 セドリックとユリシスが、一足遅れてラビ達に追い付いた。彼らは息を切らせつつ、石炭が詰められた荷車の前で佇むラビを不思議そうに見た。

「ラビ、一体何が――」
「この荷車に混ざっている石が、氷狼を凶暴化させているんだ」

 ラビが早口で説明を始めた時、ノエルが両耳を立てて警戒の声上げた。