くそッ、なんでオレがこんな目に遭わなきゃいけないんだ。

 ラビは心が折れそうになった。理不尽にも思える状況に沸々と怒りが込み上げた時、ふと、変に言い訳するから事がややこしくなっているのだと気付いた。

 もう我慢は限界を超えており、どうにでもなれという気までした。追い込まれたラビは、顔を上げて言い放った。

「ノエルは人間じゃなくて狼!」

 しかし、言ってすぐに後悔した。「誰にも見えない親友……だもん…………」と続けたが、馬鹿にされるのが容易に想像できて、一瞬にして背筋が冷えた。

 ああ、しまったな、と思った。

 二人の顔が見られず、ラビは再度テーブルに突っ伏した。セドリックが「どういう事ですか」としつこく訊いてくるので、そのまま喉から声を絞り出すように答えた。

「……ノエルは、お話が出来る狼だもん。いつだってずっとそばにいてくれる、一番の親友なんだ」

 ノエルがいれば寂しくなかった。毎日話をして、二人で温もりを分けあった。彼がいれば何も怖くはないのだ。

 死んだ両親と、ラビだけの秘密の親友。

 口に出したらいなくなってしまいそうで、そうなったら嫌だなと思ったら涙が溢れてきた。自分のエゴだけで信じて欲しいとは言えないけれど、真っ向から彼の存在を否定されたら、立ち直れないような気もした。