一人はつまらないなと思いながら、ラビは、しっかりサンドイッチを完食した。

 食後は、サービスでもらったクッキーを食べてみた。一口噛むと、甘い美味しさが口の中に広がり、朝から感じ続けていた苛立ちも忘れて、多分はわざと顰め面で澄ましているラビの表情も、つい自然と綻んでしまった。

 ホノワ村に菓子屋はないから、昔から、お菓子を売っている店がある土地には憧れていた。せっかくここまで出向いて来たのだから、隙を見て菓子屋というものを探して立ち寄ってみようかな、と呑気に考える。

「美味しそうに食べてますね、気に入ったんですか?」

 どこからともなく声が聞こえてきて、ラビはギクリとした。目を向けてすぐ、断りもなく向かいの席にセドリックが腰を降ろしてきた。

 ラビが「どっから沸いて出たんだ」と唇を尖らせると、セドリックが深い溜息をこぼした。

「慌てて探し回ったんですよ。少し休ませて下さい」

 セドリックは店員に水を要求した後、額に浮かぶ汗を拭った。用意された水を一気に飲んで深く息を吐き出すと、しばらくは何も話さず、コップの周りについた水滴を眺めた。

 考えるような表情からは一体何を思っているのか読み取れず、ラビは違和感を覚えつつも、二枚目のクッキーに手を伸ばした。