朝も遅い時間だったので、既に人通りは一際賑わい、町中が活気に溢れていた。

 ノエルは、ラビが朝食を抜いた事に気がつくと、いい匂いのする店があると彼女を誘った。そこは小さな食堂のようで、外に丸いテーブルと三脚の椅子が置かれた席が四組分用意されていた。

 通り過ぎる人間が、よそよそしくラビを見やった。金髪金目を見て珍しそうな顔を向ける男もいたが、多くの人々は、不幸をもらいたくないと言わんばかりに距離を開けた。

 朝食の時間を過ぎた店内は客足も引いていたが、厨房に立つ男も、ラビには良い顔をしなかった。悪いけど他にも客が入っているから、外で食べてくれないかと歯切れの悪い口調で言う。

 すると、店の奥からふくよかな身体をした中年の女が出てきて、彼を叱り付けた。

「ちょっとッ、あんた何いってんだい! 可愛らしいお客さんじゃないか」

 彼女は男を厨房に戻すと、ラビに「嫌な思いをさせてごめんね」と、卵サラダの挟まれたサンドイッチと「おまけだよ」とクッキーを三枚付けてくれた。ラビは礼を言って、外の席に腰かけた。