なんだろうか。オレが寝ている間に何かあったのか?

 なんだかますます不利な状況に進んでいるような気がして、ラビは慌てた。

「そ、それに、あれはオレが泣きやまなかったから、親が寝てる時こっそり抜け出して、気晴らしに付き合ってくれたというか……強くて優しい奴なんだよ、本当の兄貴みたいに面倒見がいいんだ」
「親が寝ている時こっそり――という事は、つまり九歳以前からの親友ですか」

 呟くセドリックから、ひやりと冷気が漂った。

 ラビは、なぜ二人の機嫌が朝から最高潮に悪いのか、不思議でならなかった。寝坊した事は悪かったと思うが、こっちは騎士団の人間ではないのだから、少しぐらい規律については多めに見てほしいし、放っておいてくれという気持ちもある。

 理不尽だ。何故彼らは朝っぱらから嫌がらせのように詰問してくるのだろうか?

 ラビは、追いつめられた状況に混乱して泣きたくなった。しかし、負けるもんかと、潤む瞳で二人を睨みつけた。

「お前らッ、朝っぱらからうるさい! 支度してオレは自分の仕事を進めるんだから、さっさと出てけ!」

 枕を思い切り投げつけられた男は、その際に彼女の肌蹴たシャツの襟元に気付いて、慌てて部屋を出て行ったのだった。