上半身を起こしてベッドの上と下も探したが、見知った黒い身体は見付からなかった。深夜に一回目を覚ました時は、狭いベッドにノエルが潜り込んでいたはずだが、恐らく、ラビが起きないと知って散歩に行ったのかもしれない。

 勝手にいなくなられるのも面白くなくて、ラビはむっつりと黙りこんだ。

「……ラビ。まさかとは思いますが、誰かを探しているんですか」

 セドリックは、次こそ言葉を失いそうになった。ラビは九歳の頃から一人暮らしのはずであり、ペットも飼っていない事は知っていた。彼女の行動は、まるで普段から誰かと寝ているようだと、ユリシスでさえ気付いている。

 ラビは、その時になってようやく、セドリックの存在を認識した。身体を起こし、寝足りない気だるさに欠伸をかみしめながら腕を伸ばした。

「……なんだ、セドリックか」
「『なんだ』じゃありません、あなたに危機感はないんですかッ」

 ラビは、よく分からないセドリックの言い分を聞き流し、ベッドの上で悠長に背を伸ばした。