テトはうろたえたが、ヴァンが「そうでもないんじゃね?」と考えるように言った。

「思い返してみたが、やっぱり男にしか見えねぇし、問題ないだろ。そうだろ、ジン? お前は女に負けるほど弱い男じゃねぇもんな?」
「とッ、当然だ! 俺は強過ぎる性悪少年に、偶然負かされたにすぎない!」
「……確かに昨日の屋上の件を考えると、あんな行動に出る女の子もいないよなぁ、とも思います」

 サーバルも、考え過ぎだったか、という表情を浮かべた。

 朝食の時間もあるので、四人の部下達は、上司に怒られる前にと、そそくさと部屋を出た。セドリックはそれを見届けると、心労絶えずといった様子で大きく肩を落とした。

 ベッドの脇に膝をつくと、セドリックは、少し苛立ったようにラビを揺すった。

「ラビ、起きて下さい。あなたには説教してやりたい事がたくさんあります」
「……う、あと五分……つか、え、説教?」

 二度目の覚醒で、ラビの脳はようやく動き始めた。彼女は眠気眼をこすりながら、ここが警備棟の一室である事を思い出す前に、無意識に横に手をやり、いつもならベッドにいるはずのノエルの温もりを探した。

 ラビは続いて背後も探ったのだが、温もりがない事に怪訝な顔をし、正面から覗きこむセドリックの頭に手を置いた。二、三回軽く叩いて感触を確かめてみるが、ノエルとはほど遠い触り心地に眉を顰める。

 まだ半ば寝惚けたラビが、現在の状況を把握するまでには、それから数十秒の時間を要した。

 ラビは首を持ち上げてようやく、ここが自分の家ではない事を思い出した。左右を探し、ベッドに自分一人である事に改めて気付くと「ん?」と疑問の声をもらす。