そもそも黒赤毛の少年の姉は、同じ髪色をした癖毛の少女で、たびたび弟達を連れて一緒に荷車を押す姿を見た事がある程度である。一体、どこがどうなれば「気がある」という事になるのだろうか。

 ラビが薬草師だけでなく、獣師として積極的に出歩いている事もあり、村にいる子供の半分は金髪金目に対しての差別意識が薄れているところもある。

 そこは有り難いのだが、ラビの事を忌み嫌う少年少女や大人達の中にも、ラビが女である事を知っている者は当然いる訳で、それにも関わらず、性別の情報だけが伝えられていないらしい事実には困惑を覚える。

 その時、ラビの隣を歩けない事に苛立ったノエルが、『ちッ』と舌打ちした際、その尻尾が大きく揺れて建物の前に置かれていたゴミ箱に当たった。

 近くにいた女性が、風が吹いた訳でもなく倒れたゴミ箱を立て直し、こぼれ落ちたゴミを拾い集めながら、不吉なものを見る目でラビを見送った。

『くそッ、だから村の中は嫌いなんだよ。狭い場所に、ごちゃごちゃ人や物を置きやがって……!』