セドリックは、ラビについて一同にきちんと説明しておらず、勘違いを否定するタイミングを逃してしまっていた事実を思い出した。

 男所帯の騎士団なので、その方が都合がいいかもしれない、とちらりとでも考えていたのが仇になったようだ。そんな自分を認めつつも、セドリックは、納得のいかない顔で答えた。

「……ラビは女性です。というか、どこからどう見ても女性でしょう?」
「一体コレの、どこをどう見れば女性に見えるのかお教え頂きたいぐらいですよッ」

 ユリシスは、珍しく感情を抑えきれずに捲くし立てた。

 そうだ、あんなのが女に見えてたまるかと、ここ数日間の精神的疲労を思い出す。彼女を言いくるめた際は奇妙な満足感を覚えたが、他人に触らせたくないだなんて、気のせいに違いない。

 葛藤するユリシスの表情を見て、セドリックは、騙すような形になった事を怒っているのだろうと考えて、こう言った。

「多分、ラビも質問されれば当然のように『女だ』と答えたと思いますよ。彼女は、誤解を解くのが面倒で黙っているだけですから」