細く白い指が彼の頭から滑り下りて、耳の上に軽く触れた。
「オレだけ体力消耗して、お前だけいつも元気って、割にあわないよなぁ……」
金色の長い睫毛が影を落として、ゆっくりと閉じられていった。
テトに伸ばされていた華奢な手が、とうとうベッドの上に転がり落ちて、静まり返った室内に、吐息混じりの小さな囁きがこぼれた。
「――……おやすみ、ノエル」
その言葉を最後に、小さな寝息が続いた。すっかり気を許した寝顔は、やけに可愛らしく見える。
数秒の迷いと葛藤の末に、ベッドの脇に立っていたヴァン、サーバル、ジンが「ひぃッ」と息を呑み、テトが「ぎゃっ」と真っ赤な顔をして後ずさった。
「嘘だろおい、マジで昨日と同じクソガキなのかッ?」
「俺の顎髭を滅しようとした悪魔はどこ行った!?」
「というか、なに今の意味深な台詞ッ? テ、テト、お前ッ、たった一日で!?」
「誤解だって! 俺の名前じゃなかっただろッ? 確か、恋人みたいな友達がいるらしいって聞いたッ」
すると、ヴァンがふと「ん?」と首を捻った。
「いや、待てよ。でも今見た感じだと、あのガキなら男同士でもアリな状況が想像でき――、いやいやいやいや、ちょっと落ち着け俺ッ。あ~っと、煙草でも吸って頭冷やしてくるかな~」
その時、部屋に大きな衝撃音が上がり、一同は飛び上がった。
すっかり存在を失念していたが、怒らせると一番怖い上司がいたのだったと思い出して、テト達はそろりと首を回した。
入口に居たセドリックの拳が、壁にめり込んでいた。拳が押しつけられた壁には亀裂が入っており、落ち着いた表情とは裏腹に、セドリックの目は殺気立って怒りで座っていた。ユリシスも、その気迫に圧倒されて動けないでいた。
「オレだけ体力消耗して、お前だけいつも元気って、割にあわないよなぁ……」
金色の長い睫毛が影を落として、ゆっくりと閉じられていった。
テトに伸ばされていた華奢な手が、とうとうベッドの上に転がり落ちて、静まり返った室内に、吐息混じりの小さな囁きがこぼれた。
「――……おやすみ、ノエル」
その言葉を最後に、小さな寝息が続いた。すっかり気を許した寝顔は、やけに可愛らしく見える。
数秒の迷いと葛藤の末に、ベッドの脇に立っていたヴァン、サーバル、ジンが「ひぃッ」と息を呑み、テトが「ぎゃっ」と真っ赤な顔をして後ずさった。
「嘘だろおい、マジで昨日と同じクソガキなのかッ?」
「俺の顎髭を滅しようとした悪魔はどこ行った!?」
「というか、なに今の意味深な台詞ッ? テ、テト、お前ッ、たった一日で!?」
「誤解だって! 俺の名前じゃなかっただろッ? 確か、恋人みたいな友達がいるらしいって聞いたッ」
すると、ヴァンがふと「ん?」と首を捻った。
「いや、待てよ。でも今見た感じだと、あのガキなら男同士でもアリな状況が想像でき――、いやいやいやいや、ちょっと落ち着け俺ッ。あ~っと、煙草でも吸って頭冷やしてくるかな~」
その時、部屋に大きな衝撃音が上がり、一同は飛び上がった。
すっかり存在を失念していたが、怒らせると一番怖い上司がいたのだったと思い出して、テト達はそろりと首を回した。
入口に居たセドリックの拳が、壁にめり込んでいた。拳が押しつけられた壁には亀裂が入っており、落ち着いた表情とは裏腹に、セドリックの目は殺気立って怒りで座っていた。ユリシスも、その気迫に圧倒されて動けないでいた。