『ちッ、可愛くねぇな。じゃあ早く寝ろ』
「ノエルが話しかけるから眠れないんだよ」

 しばらく窓から吹きこむ風の音を聞きながら、ラビは、不貞腐れるノエルを見つめていた。次第に瞼が重くなり、とうとう目を閉じてしまう。

 ノエルがシーツをくわえ、ラビの首までしっかり掛けた。

 彼女は眠りに落ちる刹那、知らず手を伸ばして、ノエルの毛並みを掴んでいた。彼はそれに気付くと、ラビの頬に鼻先をすり寄せた。

『俺はどこへも行かない、お前のそばにいる――おやすみ、小さなラビィ』

 その声も認識出来ないまま、ラビは、深い眠りに落ちていった。

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 懐かしい夢を見たような気がしたが、何だったかは覚えていない。

 ラビは、早朝一番に騒がしいノック音が聞こえたような気がして、半ば強引に覚醒した。しかし、すぐに強烈な眠気を覚えて、再びシーツを被り直していた。

 予定起床時間になっても出てこないラビを心配し、扉を何度か叩いたテトは、迫る時間に急かされて、鍵のない扉を開けて中に入った。未だにベッドで丸くなっているラビを発見し、思わず駆け寄って乱暴に揺らした。