結局、書庫内の片付けが終わったのは深夜遅くで、夜空に浮かんだ三日月もだいぶ傾いていた。

 ラビは欠伸を噛みしめつつ静まり返った廊下を歩き、部屋に戻ってから手早くシャワーを浴びた。

 開いた窓から吹きこむ夜風は心地良く、大地を照らし出す青白い月明かりが、部屋に差しこんでいた。普段ホノワ村から眺める夜空とは、星の位置が少し違っているようにも見えて、ラビは、ノエルの隣から少しだけ夜空を眺めた。

「ねぇ、ノエル。【月の石】を見付けたら、どうするの?」
『俺は妖獣だ。力を取り込まないで、そのまま発動だけさせて使用済みにしてやればいい』

 なんだか魔法みたいだ、とラビは思ったが、眠気に勝てず続けて欠伸が込み上げ、そのままベッドに潜り込んだ。

『窓、閉めようか?』

 ノエルが隣に寝そべりながら、頭を持ち上げてそう訊いた。

「別に寒くないよ」
『よし。じゃあ子守唄でも唄ってやる』
「ノエルって音痴じゃん」

 可笑しくなって、ラビは声を潜めて笑った。何度ノエルに教えても、彼は上手く音程が取れないままだったのだ。