「ラビ、三日振りだな。どうして取っ組み合いに来なかったんだよ?」
「お前らこそ、親の手伝いはどうしたの」
「きゅーけー中なのッ」

 一番幼い男の子が、ラビの質問に対して、律儀に手を上げて主張する。

 自営農家が多い村なので、彼らは物心ついた頃から、当然のように親の仕事を手伝っているしっかり者だ。ラビは彼らの休憩理由を察して「なるほど」と一つ頷いた。

「なぁなぁ、また勝負しようぜ。というかさ、俺、川釣りしたいんだよな」
「お前の父ちゃんが駄目って言ってただろ」

 ラビは目も向けず、腕にしがみついて来たその黒赤毛の少年の頭を押しやった。

「森には狼もいるし、熊もいるの。危ないから駄目」
「えぇ~、ラビがいるならいいじゃん。ラビが獣師やってから、村に狼も熊も近づいて来ないって、姉ちゃんがそう言ってたぜ」
「なぁなぁラビ、こいつの姉ちゃん、ラビにちょっと気があるんだよ」
「あのさ、お前の姉ちゃんって、まだ十二歳だよね……?」

 別に女である事を隠している訳ではないのだが、勘違いされる事が圧倒的に多く、面倒だと訂正していないのはラビの方だ。しかし、そういう事は想定していなかっただけに、ラビは、どうしたものかと珍しく言葉に窮した。