他の奴らはどうしたのだろうと廊下の向こうへ目を向けると、意識を失ったグリセンを運ぶ男達の集団が見えた。一人だけ労力を貸していないユリシスが、先導するようにそばを歩いている。

 というか、何でまたあの人は倒れたんだ?

「で、なんか用? オレ、集中して読んでるんだけど」
「ラビ、あなた先程テトに触られていたでしょうッ? 頬にも触られましたか!?」
「頬? 金髪が珍しいって見られただけよ」

 ラビはそう答えて、「とりあえず邪魔しないで」と怪訝な顔で扉を閉めた。廊下で残されたセドリックは、さっぱりしすぎる彼女を思ってしばし動けなかった。


 窓から差し込む日差しが、西日に変わった。

 そのまま書庫にこもっていたラビは、控えめに叩かれる扉の音に気付いて、ようやく顔を上げた。

「ラビ、扉を開けて下さい。サンドイッチを持って来ましたから」

 扉の向こうから、セドリックの声がした。

 言われてみれば、少し小腹がすいたような気がする。思えば昔も、薬草の勉強にのめり込んでいると、いつもセドリックがやって来て「食事をしなさい」「少しは眠って下さいッ」と何かと世話を焼かれた覚えがあった。