ラビは、髪に触りたいなんて言われたのは初めてで、その様子を静かに見守っていた。彼が更に身を屈めてきて、近くからラビの顔を覗きこみながら、耳の上の髪に指を絡めた。

 一瞬だけ、躊躇するようにその手が止まったが、今度は先程よりも深く指先を髪に埋めて、耳の後ろに流すように優しく梳いてくる。

 どこかで誰かが息を呑むような声が聞こえたが、ラビは動けなかった。頭皮に微かに触れたテトの指先は熱くて、ずっと昔に亡くなった父と母が、よくこうして触れてくれていた懐かしさを思い出した。

 ああ、寂しいなと、漠然とそう感じた。

「……本当に金色なんだな……そういえばさ、さっき頼まれた事があるんだけど、ラビって夢とかある?」

 どこか物想いに耽る顔で、テトはすくい上げた髪に指先で触れながら、近い距離からそう問い掛けてきた。

 ラビは、その様子を不思議に思ったが、テトの大きな手が耳を包み込む熱に懐かしさを覚え、「あるよ」と促されるまま囁いた。