「突然笑って、どうした?」
「ふふっ。実はさ、すごく落ち込んでいた時に、二人で夜に家を抜け出した事があったんだ。『このまま誰も知らない何処か遠くへ行こうか』って、あいつがそう言ってたのを思い出したら、何だか可笑しくなって」

 ラビは、くすりと笑ったところで、こちらに伸ばされる手に気付いた。

 きょとんとして見上げと、テトが「綺麗な色だと思うけどな」と、中途半端な位置で手を止めて、不思議そうにラビの髪を眺めていた。

「というかさ。なんか、それって恋人みたいな友達だな」
「そうか?」
「うん。――髪、触ってもいい?」

 テトが、遅れて許可を求めてきた。自分の行動理由が分からないような顔で、彼は困ったように小さく笑っていた。

「いいけど、別に普通の髪だよ。色が違うだけ」
「そうだよ。髪の色がちょっと変わっているだけなんだから、堂々としていればいいんだって」

 テーブルに片手を添えて、テトが少し腰を上げた。ラビの金色の髪を一房すくい上げて、意味もなく指で梳く。