よくよく見れば、どれも昨夜、ラビが何十回と叩きのめした顔ぶれだった。先頭には、顎の先に髭のあるジンの姿まであった。

 多分、真面目に努力はしているのだろう。

 ラビは無理やり自分を納得させ、むさくるしい男達から視線を外して机の上に顔を伏せた。久しぶりに過ごす一人きりの長い時間は、とても暇だった。

 しばらくすると、昼食の合図が聞こえてきたが、大量の朝食で胃がもたれていたので食堂へは向かわなかった。室内は風の通りがあって涼しく、目を閉じていると、次第に気だるい眠気に襲われた。


 陽気な声が聞こえたのは、それから少し経った頃だった。

 軽く肩を叩かれて、ラビはふっと顔を上げた。そこには騎士団の制服のジャケットを肩に掛けたテトがいて、彼は「よっ」と声を掛けながら隣の席に腰かけて来た。

「午前の調査で、サーバルを泣かしたんだって?」
「何だそれ。泣かした覚えはないけど?」
「そうなのか? ヴァンが食堂で喋りまくってたぜ。昼食はいらないのか?」
「朝っぱらから大量に食ったから、まだ入らない」

 そう答えると、テトがテーブルに腕を置いてラビを見てきた。