ラビを連れてユリシスが部屋を出ようとした時、グリセンは、遅れて一つの事を思い出し、慌てて彼の背中に声を掛けた。

「ユリシス君ッ、手紙の件は、絶対誰にも言わないように!」

 ユリシスは、ますます手紙の内容が気になったが、グリセンの必死な形相に追及を諦めた。上司の胃痛を増やす訳にも行かず、難しい顔で「かしこまりました」とだけ答えて、ラビと共に部屋を出た。

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 資料の置かれている部屋は、部外者は立ち入り禁止の場所らしい。ユリシスに「下で待っていて下さい」と言われ、ラビは廊下で彼と別れて一階の広間へと向かった。

 昼食時間前の広間には誰もおらず、そこから開けた先の外側に、素振りをする上半身裸の騎士団メンバーがいた。ラビは入ってすぐの席に腰かけて、男達の素振りの様子をしばらく眺めた。

「……というか、なんで上半身裸?」

 上半身裸の男達は、一心不乱で素振りを続けながら、時々「筋肉は健康美!」「筋肉で逞しい身体!」「俺たちは強い!」と真剣な顔で叫んでいた。