悩めば悩むほど胃が痛み、グリセンは耐えきれなくなって叫んだ。

「ッ、ラビ君!」

 すぐにでも勝負を始めようとしていたラビは、ユリシスの手を掴んだまま「なんだよ」と、グリセンの方に顔を向けた。

「被害者が立ち寄った先なら、確か資料が残っていたはずだから、ユリシスに見せてもらってくれ。だから腕相撲なんてやめなさいッ」
「資料があるの?」

 そういう事ならば、とラビは素直に手から力を抜いた。しかし、数秒ほど待ってもユリシスの手が離れてくれなかったので、無理やり手を振り払った。

 新しい嫌がらせかと思って目を向けると、何故か、ユリシスは自分の手を見つめて動かないでいた。

 グリセンも、ユリシスの異変に気付いて首を捻った。聞こえていなかったのだろうかと思い、ユリシスの名を呼んだ。

「ユリシス。例の調書を探して、彼に見せてあげてくれ」
「人手不足なので、新しいものはまだ整理されていませんが。……まぁ仕方ありません、探してみます」