ラビが驚いて目を丸くすると、害はないのだと伝えるように、ユリシスが優しい動きで流れるように指先を握り込んできた。彼の指は、ラビの細い指をなぞり、僅かな躊躇を見せて指先を絡め取る。

「……お前、何してんの?」
「…………反則がないか確かめていたのですよ」
「んな卑怯な事しねぇよ! 何言ってんだ、お前の手がデカい方が反則じみてるのにッ」

 ラビの怒鳴り声と同時に、グリセンが「はッ!?」と目を覚ました。彼は、目の前で始まっている腕相撲を見てギョッとした。経緯は不明だが、悪い予感しかしない。

 ユリシスは、馬鹿馬鹿しいと言わんばかりに息を吐くと、ラビに半眼を向けやった。

「失礼な、平均的な大きさですよ。君の手が、男にしては小さすぎるんです」

 ユリシスから感じる冷たい棘を含んだ言葉と、ラビの攻撃的な眼差しに、グリセンはまたしても肝が冷えた。今は腕相撲でも、すぐにでも殴り合いが始まるのではないかと不安になる。