思い返してみると、ツンとした反応も失礼な態度も許せてしまうぐらい、彼は不思議と愛嬌があって憎めないようなところもあった。警戒が解けた際に少しだけ、荒い口調が消えて丸くなっているような気もする。まるで、誰かの悪い口調を中途半端に真似ているみたいにも思える。

 グリセンは、ラビを茫然と見つめ、唐突に気付いてしまった。

 なんだ。そうして威嚇していない顔は、中々に美少女じゃないかと思い掛けて、――ふとグリセンは我に返った。

「~~~~~ッ!?」

 グリセンは、訳も分からず卒倒しそうになった。あどけない少年に対して、一瞬でも少女だと勘違いし、そのうえ見惚れていた自分が信じられない。

 正体不明の緊迫した感情が口から飛び出しそうになったが、彼はどうにかソファに深く背中を預けて冷静になろうとした。彼は男の子だッ、と心の中で何度も自分に言い聞かせた。

 ラビの様子を見たユリシスが、「品がないですよ」と着席を促した。ラビは唇を尖らせたが、突然俯いてしまったグリセンが気を悪くしたらしいと察し、渋々座り直した。