仮想空間は奇跡的に偶然仕上がってしまった代物であるが、その件についても、マルクが一体どうやって、個々の小さな仮想空間を作り上げ、取り込む事が出来たのかも謎だった。

 防衛として置かれたセキュリティーのようだと感じたので、ハイソンは確認された当初、これらを六つの防衛システムと位置付けた。しかし、第一から第六までの仮想空間は、どうやら、元は不安定だった【仮想空間エリス】を再構築する為の柱だとも推測された為、それらに存在するシステムの核を『支柱』と名付ける事にした。

 上層部には一旦、マルクが仕上げた防衛セキュリティーは、侵入者に対し拒絶反応起こす特性がある可能性は伝えていた。支柱をすべて破壊し、『エリス・プログラム』を破壊せよというのが、報告後に上から下った指令だ。

 けれど、新しい仮想空間のデータの解説が進むにつれ、ハイソン達は恐ろしい事実を予感していた。

 現在、第一の支柱、第二の支柱を破壊した事によって、こちらに二つの仮想空間のデータが大量に流れて来ていた。第一の防衛セキュリティーのデータだけでも、恐ろしい事実を推測させるには、十分な内容だった。

 強制的に書き換えられ、稼働させられたマルク特性のプログラムには多くのバグがあり、常に崩壊と再構築が発生していた。それは、現状の仮想空間の構築として一貫性に欠けており、外からの侵入者を排除するプログラが徹底して作動している。

 解析が先に済んでいる第一の仮想空間のデータ状況は、三人の侵入者の行動を感知した直後から、排除行動に移っている事が確認されていた。

 不規則なプログラムの崩壊と再構築は、異常なスピードで不定期に発生しており、一部『エリス・プログラム』からの意思介入も見られたが、マルクが操作しているのか、【仮想空間エリス】本来の防衛セキュリティーが自動作動しているのかは、不明だ。

 仮想空間に入っている被験者にとって、そこはリアルな現実空間となる。モニター上で支柱の場所を簡単に見つけられたとしても、実際に仮想空間内にいる人間にとって、そこまで辿り着くには容易ではない。