三日間の明けない夜が始まった。

 それが本当に三日間続いて、そうして三日後には再び昼間が訪れるのかは分からない。けれどテレビでは、この日が訪れるまで長いことそのニュースで持ちきりだった。

 何事もなく世紀末が過ぎて、新世紀がやってきた。どこかの国々では争いや緊迫したままの睨み合いが続いた。国によっては、とくに変わることもなく過ぎていったところもある。

 そんな中、ようやく数十年が回って、とうとう新たな暦が始まるのだと世界が沸いたのが「三日間の明けない夜」という、歴史上はじめての現象だった。

 以前あった世紀末に世界は滅びなかった。我々の世代で、ようやく新しい時代に突入するのだ――各国のお偉い人たちはそう熱く語った。

 だが、新しいとは一体なんだ?

 半分、もしくはそれ以下の人間はそう思っていると思う。ぼくも、その内の一人だ。

 数十年前、僕ら人類は無事に新世紀を迎え、技術は発展し、人々の暮らしは良くなったとテレビ画面の向こうでは言うけれど、僕らの暮らしはそんな理想とはまるで違っていた。

 僕らの町は、十三区もの広さを持った旧都心だ。置き捨てられた廃屋のようなビルや家が立ち並び、古いアスファルトは建てつけの悪い戸のように車をがたがたと鳴らした。

 何もかも整えられた美しい町から吐き出される熱気が流れ込み、夏場は全身を蒸し風呂に焼かれるように辛かった。建物の片隅に残された木は花を付けるわけでもなく、誰かがぶつぶつ文句を言いながらいたるところからまばらにはえてくる雑草を千切り取る。そうしなければ、すぐにでも虫の巣や発生源になってしまうからだ。


――皆様、※※※※年※月※日、この世界に「三日間の夜」が訪れます。


 年が明けて間もない頃、一斉に知らされたその情報は、多くの人の混乱を呼び、同時に強い好奇心を集めた。そんな映画や漫画や幻想小説のようなことが起こるのかと、誰もが関心を寄せた。