白状してはダメですか。僕は……さよならなんて、したくなかった

 年に数回、僕は妻とじっと向かい合う。

 妻は四年前にこの世を去った。三十一歳のまま、もう歳を取ることがない妻は、あの頃の美しいままに遺影の中から僕に微笑みかけている。

 平成十八年九月十五日、享年三十一歳だった。彼女と同い年だったはずの僕は、もう三十五歳になっている。それを思いながら真面目に正座をして、背筋を伸ばして真っ直ぐに彼女を見つめる。そうやって雑念を追い出して、僕は彼女と素直に向かい合った。

 こうして彼女と向かい合うたび、僕はいつも、彼女と過ごした多くの事を思い出した。笑いあった日々、いっぱい小喧嘩をしたこと、美味しい料理を食べて二人で並んで座ったこと、いつでも家で食べられるようになったカルボナーラ。

 それでも、一番多く思い浮かぶのは、困らせてしまった彼女の顔だった。

 最初から最期まで、僕は「ごめんね」も「ありがとう」もあまり言えなかった。なかなか素直さを出す事が出来なくて、言葉をぎこちなく態度にする。