白状してはダメですか。僕は……さよならなんて、したくなかった

「そんな感じが、しますか」
「するわよ。私がどんなに見よう見真似でやっても、彼女みたいには出来ないから羨ましいわ。だから彼女の仕草や雰囲気が残っているあなたの料理を見て、食べるのが好きなの」

 ユミさんはそう言うと、そっとカウンターから離れた。

 安樂は説得に失敗したと思っているようだが、僕を召喚するという作戦も少しは功をなしたのか、彼女の機嫌は良くなっているようだった。しかし、ユミさん自身が弱っている彼の様子を楽しんでいるようだったので、僕はしばらく黙っている事にした。

 全員が食卓についたところで、ユミさんの隣に移動した安樂が、楽しげにテーブルを覗き込んだ。

「ほんとに美味そうな匂いだなぁ。市販のソースで少しアレンジしても、クオリティが高いまんまってすげぇわ」
「パンでも焼けば良かったかしら。でも味付きパンなのよねぇ」
「今回は、そのままいただきましょう」

 午後にでも、二人は和解後のデートがてら外食するだろうと分かっていたから、僕はそう言って『いただきます』を促した。