白状してはダメですか。僕は……さよならなんて、したくなかった

 どうやら安樂は、何かしらきつく言い負かされて気落ちしているらしい。僕はその間にもパスタ全体にソースを絡めていて、しっかり仕上げに乾燥バジルを振りかけた。

 カウンターに肘をついてきたユミさんに指示されて、安樂が長身の図体を屈めるように三つの洋風皿を持ってきた。僕がそこにパスタを盛りつけ、買って来たパセリを最後に添えると、見守っていたユミさんがにっこりと微笑んだ。

「ほんと、料理が上手ねぇ」
「元々簡単にではあるけど、料理はやっていたから飲み込みが早かっただけですよ」
「うん、そんな感じはするわ。あの頃の『男の料理』も、とても丁寧で美味しかったもの」

 安樂が先にパスタの盛られた二皿を食卓に運ぶ間も、ユミさんはキッチンに残ったカルボナーラを、どこか慈しむように見つめていた。

「それにね、あなたの指先って、彼女と同じ感じがするわ」

 そう言われて、僕は視線を上げた。

 ユミさんも目を上げてきて、僕らはしばらく見つめ合った。