白状してはダメですか。僕は……さよならなんて、したくなかった

 食卓いる安樂は、ユミさんの手を握ったまま、相変わらず歯が浮きそうな愛の言葉を熱心に語り聞かせていた。ユミさんは整った顔を冷たい彫刻のようにして、安樂を見やっている。

 その様子をチラリと確認した僕は、小さく息を吐くと、広いキッチンに用意しておいた材料の中から『カルボナーラのソース』を一袋取ってフライパンに入れた。続いて濃厚なオレンジ色をしたチーズを一枚入れ、買って来たばかりの生クリームを開けて適量を流し込む。

 火を付けてチーズを溶かしつつかき混ぜ、僕は並んでいる調味料から塩コショウを手に取って振りかけた。続いてウイスターソースを少量入れ、更にかき混ぜる。

 フライパンの中で、材料が溶け込んでソースがとろとろになったところで、一旦味見をしてもう少しばかり生クリームを足した。それから、仕上げに水を切ったパスタを放り込んで強火でソースを絡めた。

「いい匂いね」

 パスタをフライバンの中でソースと絡め始めてすぐ、ユミさんがほぅっと息を吐いてそう言った。