白状してはダメですか。僕は……さよならなんて、したくなかった

 彼女は、とても料理が上手だった。男料理だった僕が、西洋、中華、和食と幅広く作れるようになったのも、彼女のおかげだ。安い食材で、美味しい料理を自宅で食べられるようになり、今では揃えたスパイスも慣れたように使える。

 パスタは、硬過ぎても柔らかすぎてもいけない。鍋に入れたオリーブオイルは、吹きこぼれを抑えてくれるし、パスタをざるに引き上げた時にかける油と同じ効果を発揮する。

 そう思い出しながら、僕は壁にかかっている時計を見た。鍋の中でかき混ぜていたパスタの硬さを、箸の先で確認して火を消した。

 僕は、妻の手作りカルボナーラが好きだった。付き合い始めた頃、喫茶店でカルボナーラばかりを食べに行く僕に気付いて、スーパーで買い物をした後、彼女は安い材料で手軽に作れる、美味いカルボナーラを僕に披露してくれたのだ。

 当時の僕は、すぐにその手順を覚えられなかった。二人で同棲を始めて、キッチンで彼女の料理風景を見てるうちに、自然と材料となる食材や調理方法が頭に入ってくるようになった。そして次第に、僕は彼女と一緒に食事を作る喜びを覚えていったのだ。