白状してはダメですか。僕は……さよならなんて、したくなかった

「何よ、その『つい』って? それで普通メールのやりとりまでする?」

 ユミさんは、ジロリと険悪に睨みつける。

 喋るたび自ら墓穴を掘っているというか、彼女の機嫌を損ねる言い方をしているとは気付かないのだろうか。

 僕は安樂に対してそう思いながら、一度視線を下ろしてパスタの固さがもう少しであると確かめてから、再び食卓で向かい合う二人に目を戻した。

 不意に、そのどこにでもあるような、向かい合う夫婦の光景にふっと気付かされた。

 思えば僕と妻は、四人用の食卓でいつも並んで座っていた。素直じゃない僕は、安樂たちのように向かいあって座る事もあまり出来なかったな、と思い出した。

 そこには、夫婦になっても初々しい気恥ずかしさもあったせいだろう。好きだとか愛しているだとか、真面目な話になると、いつも僕が先に身体の向きをそらしていた。

 それでも僕は、彼女の声には一心に耳を傾けていて、一字一句を聞いてへらりと笑っていたのだ。