白状してはダメですか。僕は……さよならなんて、したくなかった

 二人が付き合い始めた当初から、料理がてんで駄目な安樂の部屋で――当時は僕も彼も薄給だったから自炊だった――時々夕飯を御馳走していたから、妙な構図ではないのだろう。

 何せ結婚後も互いの家族として交流は続いていたし、僕がここで料理を作っている風景は、見事に安樂夫婦の中に馴染んでしまっているわけで……。

 いや、やはり妙だろう。

 なんで日曜日に夫婦喧嘩ド真ん中の食卓を眺めながら、僕がこうして料理を担当しているんだよ。呼び出したあいつ、ほんと馬鹿んじゃないのか?

 僕はパスタを茹でながら、難しい顔を上げて首を捻った。なぜ夫婦喧嘩の行われている彼らのマンションで、僕は貴重な日曜日の朝十時から昼食を作っているんだ?

「あんた、またナンパしたんでしょ。あたし以外の女に色目使うなって、散々言ったのに」
「本当に違うんだって。リョウコちゃんとアキコちゃんが『居酒屋あっちゃん』にこれからも通う事になって、それでついその場のノリでメル友になったんだけど、この辺の店をよく知らないっていうから、ついついやりとりが続いているというか――」