白状してはダメですか。僕は……さよならなんて、したくなかった

 リョウコさんとアキコさんは、先週『居酒屋あっちゃん』にやってきた新入りである。共に二十七歳で、近くの印刷会社に勤める事務員だった。

 店の雰囲気が気に入った彼女らと同様に、店主や安樂を含む常連客たちも、新規の客である彼女を気に入ってしまった。元々女好きの気がある安樂は、ナンパの如く二人とメールアドレスを交換し、そのアドレス帳を早朝、ユミさんに見つかってしまったのだ。

 身の潔白を証明するためという口実で、僕は安樂の勝手な下らない判断で呼び出されて、昼食作りをさせられていた。

 きっと大喧嘩に持ち込まないために、彼なりに考えた策略なのだろう。ユミさんは、確かに訪ねてきた僕を見て、一旦表情を和らげていた。しかし、その直後に忌々しげに安樂を睨みつけていた事を思い返すと、あまり緩和効果はないのではなかろうかとも思う。

 こうして僕は、今、パスタを茹でている。