僕は彼の話を聞き流しながら、ふと、妻との間に多く起こっていた小さな喧嘩を思い出した。のんびりと構える僕に対して、彼女は不意に細かくなる場面があり、付き合っていた大学時代から何かと衝突していたものだった。

 服の種類によって畳み方があり、衣装棚に掛ける上着も彼女の中では選別されていた。

 その基準は、今でも全く分からない。いつも彼女は「どうして分からないのよ。これは、畳んじゃ駄目ッ」と言って、僕が持っていた洗濯物を取り上げたりした。だから、手伝っていた僕の方は、なんだか居心地が悪くなってしまうのだ。

 掃除もきちんとする女性だった。大学から一人暮らしだった僕も、掃除や家事には長けている方だったのだが、彼女とは少々勝手が違っていて手順を一から説明される事があった。

 元々身についていた掃除の仕方を変えるのは癪で、結婚後しばらくもすると全て彼女がやるようになった。僕は週に一回、トイレと風呂の清掃を担当するばかりだ。