敬人が笑わなくなった。いや、友達に気を遣わせまいと笑ってはいるけれど、それがどんどんへたになっていく。その友達の稲臣や紙原がわかりやすく彼を気にかけている。
まるでトキを責めているようだった。俺たちは気づいている、お前が敬人をいじめているのを知っているとでもいっているようだった。
違う、トキじゃない、と彼らにいいたかった。悪いのはトキじゃない。トキは優しい女の子だ。きっと誰より純粋な心を持っている。敬人をいじめているのは私だといいたかった。いおうとしたことは何度もある。
けれどそのたびに罪悪感に押し潰された。まるで、自分のせいでトキが落ちていくのを見ることがこの罪への罰であるとでもいうように、体が動かなくなった。
いつからか、紙原が私を警戒するような目で見るようになった。彼は稲臣と違って目つきは鋭くない。それなのに、ふと稲臣と目が合うときより、紙原とそうなるときの方が緊張が走った。
いつ『お前か?』とその唇が動くかと変な汗が出た。いつ、『お前だな』と怨恨に満ちた恐ろしい笑い顔がこちらへくるかと、寒いのに暑くてたまらないような感覚がした。
詰られるのが怖いのではない。恨まれて、蔑まれて、非難されて当然のことを私はしている。敬人もトキも、なんの罪もない善人だ。人を騙すことも、傷つけることもしない。トキは罪に罰を与えているだけだ。
そこに罪はないけれども、彼女は確かに罪を見ている。私が見せているのだ。偽りの罪。敬人がトキに惹かれてしまわないように、もう二度と敬人を失わないようにという、醜い独占欲に従って。
まるでトキを責めているようだった。俺たちは気づいている、お前が敬人をいじめているのを知っているとでもいっているようだった。
違う、トキじゃない、と彼らにいいたかった。悪いのはトキじゃない。トキは優しい女の子だ。きっと誰より純粋な心を持っている。敬人をいじめているのは私だといいたかった。いおうとしたことは何度もある。
けれどそのたびに罪悪感に押し潰された。まるで、自分のせいでトキが落ちていくのを見ることがこの罪への罰であるとでもいうように、体が動かなくなった。
いつからか、紙原が私を警戒するような目で見るようになった。彼は稲臣と違って目つきは鋭くない。それなのに、ふと稲臣と目が合うときより、紙原とそうなるときの方が緊張が走った。
いつ『お前か?』とその唇が動くかと変な汗が出た。いつ、『お前だな』と怨恨に満ちた恐ろしい笑い顔がこちらへくるかと、寒いのに暑くてたまらないような感覚がした。
詰られるのが怖いのではない。恨まれて、蔑まれて、非難されて当然のことを私はしている。敬人もトキも、なんの罪もない善人だ。人を騙すことも、傷つけることもしない。トキは罪に罰を与えているだけだ。
そこに罪はないけれども、彼女は確かに罪を見ている。私が見せているのだ。偽りの罪。敬人がトキに惹かれてしまわないように、もう二度と敬人を失わないようにという、醜い独占欲に従って。